IT企業にダイバシティーな個性豊かな人材が集まる背景
IT企業にダイバシティーな個性豊かな人材が集まる背景として、IT業界は他業種と比べて①平均年齢が若く、②在職年数は短く、③平均転職回数が多く、人材の流動性が高い労働市場で、ヒト・モノ・コトなどの情報、トレンド、価値観などが集まりやすいように感じます。そのためIT企業は一般的にみられる雇用体系では人材が集まりにくいため、ワークライフバランス(WLB)をテーマに「働きやすさ、福利厚生、給与」を充実させて、社員の定着と採用に力を入れています。IT企業はエンジニアやWebデザイナーを中心に、広報、人事総務や経理などのバックオフィスで構成されているので、社員の物事の捉え方、仕事の進め方、問題解決の導き方などに大きな違いがあります。そのため経営陣や管理職は、多様な価値観や経験を活かす(生かす)人材マネジメント(HRM)の理解と策定が重要になってきます。
同じ職種でも考え方の違いがはっきり
職種の違いだけでなく同じ職種のエンジニアでも、知識や技術、キャリアなどの捉え方に違いがあります。たとえば、エンジニアAさんは知識と技術を追求してスペシャリスト(技術の追求)を目指したい。エンジニアBさんはプロジェクトを管理運営できるマネージャー(リーダーシップの発揮)を目指したい。エンジニアCさんは会社から要請があればスペシャリストでもマネージャーでもいい(オールラウンドに対応)と思ってます。そのため「在籍年数が長いから、経験があるから、空きがあるから」などの理由で人事配置を決めるのではなく、それぞれのエンジニアのパーソナリティーを含めた特性の違いを活かす組織づくりが必要です。
適材と適所をマッチングできる環境を整える
もし、エンジニアA、B、Cさんの特性の違いを理解せずに人事配置をしてしまったら能力を十分に発揮できないかもしれません。そのような事態にならないためにも、会社は社員に期待するキャリアパス、職責、知識やスキルなどをきちんと明記して、適材と適所をマッチングできる環境を整えていきます。各自の特性(適材)に合ったポジション(適所)に配置できると社員の能力やパフォーマンスの状態の確認、つまり効果測定(ROI)もおこなえるので、人事制度の「賞与、昇給、昇格」、「研修トレーニング」、「配置」などの整合性を高めることができます。
特性の把握は、タレントマネジメントやピープルアナリティクスのベースになる
このように社員の特性を把握しておくことで、管理職は部下の適正にあった配置、評価、そして人材育成開発(HRD)をおこなうことができます。詳細は別の機会になりますが、社員の特性を把握する過程で、自社の職務、職能、職責などの要件定義を振り返ることでタレントマネジメントやピープルアナリティクスのベースとして活用できます。ここでは「適材」で求められる①能力、②パフォーマンス(※OFFICE Pは知識、スキル、経験をもとに発揮できる状態を定義しています)、③成長の機会、「適所」で求められる④ポジション、⑤環境や機会、⑥管理職のマネジメントを振り返ることがポイントです。これらのポイントは、社員の特性だけでなく会社全体の振り返りになるので、会社の「できていること(強み、機会)」と「できていないこと(弱み、脅威)」も明らかになります。つまり①~⑥のポイントを整理することで、タレントマネジメントやピープルアナリティクスにつなげることができます。
ウチとヨソは違う
ITエンジニアは、会社との相性や雇用条件が合わなければ転職が容易な状況の「売り手市場」です。そのためIT企業は就業環境を整備して採用と定着の実現を図っていますが、それを実現できるのは資本や知名度の大きな企業で、資本や知名度が劣る企業にとっては難しい施策です。だからといって無策では、人材の獲得、定着、成長は実現できません。ワークライフバランスの整備も大切ですが、そこで重要なのは、エンジニア自身に実際に“聞く”ことからはじめることです。なぜなら、経営陣が良かれとつくった制度が、実は現場のニーズと大きく乖離している場合があるからです。競合他社と同じ内容を導入(マネ)することも大切ですが、それが本当に自社のニーズと合っているかわからないので、まずは社員から実際に聞く方法がよいのです。
コンセプトからブレないことが大切
ヒアリングでは、就業環境の改善につながるアイデアやヒントを見つけることができます。そのなかには、一見突拍子のないような意見でも話を進めていくと問題の本質を明らかにしているものがあります。ここで重要なのはパーパス、MVV、世界観などの会社のコンセプトから絶対にブレないことです。どんなに素晴らしい意見であっても会社のコンセプトと違った内容では、本質から大きくズレてしまいます。会社のコンセプトを軸に、どのような就業環境が期待できるのか念頭に入れてヒアリングをおこないます。ここでの最も重要な目標は、会社のコンセプトと就業環境に共感してもらうことです。共感は給与や福利厚生とは異なる魅力を社員に訴えかけられます。だからといって共感に過度に期待するのではなく、職務、職能、職責に見合った給与や福利厚生を整えることも忘れてはいけません。
IT企業のコンセプトデザインと人材マネジメント(HRM)は、多種多様な人材を活かす(生かす)組織づくりが重要です。ベースになる社員の特性を理解して、組織や就業環境に取り組んでいるのに「なぜ、うまくいかないのか?」とお困りなら、それは思っていたこと、考えていたことと、実際に聞いて知ったことの違いがあるかもしれません。もし答えが見つからなければ、それは会社と社員が共感しあうコンセプトに問題があるのかもしれないので、会社のパーパス、MVV、世界観、価値観を振り返り、新しいコンセプトをつくりことをおすすめします。
パーパスやMVVの策定などコンセプトデザインでお困りでしたら、まずはお気軽にご相談ください。