理論で紐解く、帰属意識を形成する3つの要因
会社に対する帰属意識を形成する3つの特徴
私が人材育成開発の仕事を通じて注目したことは、社員の帰属意識には大きく分けて3つの興味深い特徴があるということです。これらの特徴は、社員が会社に対してどのような感情を持ち、どのように会社に関与しているかを示しています。そして、この帰属意識の違いは、社員が会社に感じる愛着や関わり方に影響を与え、その結果として定着率や組織内でのパフォーマンスにも大きく反映されます。したがって、社員の帰属意識を正しく理解し、それを強化することは、企業の持続的成長にとって欠かせない要素です。
帰属意識の低下が自己肯定感に与える影響:社会的アイデンティティ理論の視点
職務内容の変更や組織の方向性の変化が社員の企業への帰属意識やモチベーションにどのように影響を与えるかを理解することで、退職や転職のリスクを軽減することにつながります。
社会的アイデンティティ理論
帰属意識の低下は、イギリスの心理学者タジフェル(Henri Tajfel)とターナー(J.C. Turner)が提唱した「社会的アイデンティティ理論(Social Identity Theory)」の観点から考察することができます。この理論では、個人がどの集団に属しているかという認識(アイデンティティ)を通じて、自己評価や自己肯定感、ひいては自己概念が形成されるプロセスが説明されています。
具体的には、人は自分が所属する集団(会社、チーム、社会的グループなど)を自己認識の重要な一部と見なし、その集団内での地位や役割を通じて自己評価をおこないます。集団とのつながりや、そこで得られるアイデンティティは、個人の自己肯定感を支える基本的な要素となるため、集団との関係が希薄になったり、役割や評価に不満が生じると、自己肯定感が低下し、結果としてその集団からの離脱を考える可能性が高まります。
企業においても、社員が自身の役割や会社とのつながりに価値を感じられるかどうかは、帰属意識の維持において極めて重要です。もし社員が会社内での存在意義を失い、役割が不明確である、もしくは評価が不十分だと感じるようになれば、自己肯定感が揺らぐことになります。こうした自己肯定感の低下は、社員の帰属意識を弱め、孤立感や疎外感を助長します。その結果、最終的には社員が会社を離れ、新たな集団、すなわち別の会社への移行(転職)を選択する可能性が高まります。
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